最近ニュースで原油先物価格がマイナスになった事がよく取り上げられていますが、そもそも、どういう経緯でこのようになったのか理解するために、情報を全てまとめて見ました。
細かいニュースの日付と、原油価格は後半の「原油を取り巻く環境変化/詳細」に記載しています。
目次
原油を取り巻く環境変化/大きな流れ
まずは大きな流れと共に原油価格の推移を把握しましょう。
1月
- 月初はアメリカ、イラン間の対立を受けて上昇
- 月末にかけコロナウイルスの懸念感から下落
2月
- 原油価格下落を受け減産合意するも引き続き下落
3月
- ロシアが減産に応じず下落
- サウジアラビアが増産を決め暴落
4月
- 再び減産合意の流れになるも軟調
- 5月限の先物の期日間近となり、投げ売り。大暴落
といった状況です。
まずここでは3つのポイントを把握してください。
- 原油価格は各国で供給量を合意する事で保たれている
- コロナウイルスの影響で経済が停滞し、原油需要が無くなっている
- WTI先物は現物で受け取らないといけない
1つずつ見ていきましょう。
原油価格は各国で供給量を合意する事で保たれている
物の価値は需要と供給によって保たれています。
原油も同じで需要に対して供給が多すぎると価格が崩壊してしまいます。
この原油の供給量を決める会合をしていたのが
- OPEC (サウジアラビア筆頭)
- OPECプラス(ロシア筆頭)
の2つです。
今までは原油の生産量の1位・2位をサウジアラビアとロシアで占めていたため、この2カ国が話し合う事によって、供給量は保たれてきました。
しかし、現在はシェールオイルという岩盤からオイルを取り出す事技術が生まれ、そのシェールオイル生産によって世界一の原油生産国がアメリカとなってしまいました。
この状況ではサウジアラビアとロシアが供給量を制限していても、アメリカが供給し続ければ意味がありません。
そこでロシアは2020年2月に減産に合意しませんでした。
それを受けサウジアラビアは逆に増産することを決定し、原油価格が暴落するきっかけとなりました。
サウジアラビアの思惑としては
- 減産合意しなかったロシアへの反抗
- 原油価格暴落によるアメリカ企業の倒産
を狙ったと考えられます。
上記したアメリカの新技術であるシェールオイルの生産は、高い技術力が必要であり、多大なコストがかかります。
そのため原油価格が40ドルを下回ると、赤字になると言われており、現にこの期間にシェールオイルオイル企業が倒産しています。
一方でサウジアラビア・ロシアは30ドル程度でも採算確保できるとされています。
原油需要が無くなっている
現在、コロナウイルスの影響で経済が停滞し、原油需要が無くなっています。
これはイメージしやすいと思いますが、外出自粛を受け、車、飛行機などのガソリンを使う物の動きが無くなっています。
ただ、需要が無くなるだけではここまで原油価格は下落しません。
需要が無くなった事を受け、原油を保管している倉庫の空き容量が全く無くなっており、原油を受け入れられる場所が無くなっているのです。
しかし保管場所が無くても、原油というのは完全に生産をストップさせる事は出来ません。
こう言った状況を受けさらに需給バランスが崩れているのです。
WTI先物は現物で受け取らないといけない
原油の先物にも
- WTI
- BRENT
など様々なものがあります。
この内、原油価格がマイナスになったのは、WTI原油先物だけです。
ではWTIは他の先物と比べ何が違うのでしょうか?
それはWTIのみ期限到来した場合、現物で受け取らないといけないという事です。
どういう事かというと、例えば5月限の原油先物に投資していたとします。その期日は4月21日です。この場合、4月21日まで先物を保有していると、5月に原油を実際に引き取らないといけないのです。
前述したように、世界には原油を保管出来るスペースはもう無く、ましてや一般の投資家に原油を引き取る能力もありません。
こういった原油を引き取れない人たちが取引期限の前日の4月20日に一斉に先物を売り払った事で大暴落が起きました。
マイナスって事は原油を買えばお金が貰えるんですね。
倉庫さえあれば大金持ちになれた!(失望)
先物とは何かと言う事についてこちらの記事で解説しています。是非ご参考下さい。
原油を取り巻く環境変化/詳細
それでは1月からの詳細を見ていきましょう。
1月初旬
- アメリカがイランへ攻撃
- 中東の緊張が高まり原油高
- 65ドル越え
1月下旬
- コロナウイルスへの懸念感高まる
- 210万バレルの減産合意も、経済後退懸念から原油安
- 1時、50ドル割れ
2月12日
- 経済後退懸念高まる
- 360万バレルの減産合意も原油安
- 51.65ドル
3月6日
- OPECプラスで減産合意否決
- ロシアが減産拒否 原油安
- 41.56ドル
3月8日
- サウジアラビアが増産発表
- 日を追う毎に増産量が増加 原油暴落
- 30.17ドル
3月18日
- OPECプラス開催目処立たず
- 原油安継続
- 22.33ドル
3月19日
- トランプ大統領が介入の意思表示(シェールオイル企業の限界間近)
- 市場が好感し原油やや上昇
- 27.68ドル
3月27日
- サウジとロシアが話し合っていないと主張
- 市場がやや揺れ 原油安
- 22.6ドル
4月2日
- トランプ大統領が減産ツイート
- 原油高
- 24.83ドル
4月3日
- ムハンマド皇太子がOPECプラスへ呼び掛け
- 原油高
- 28.79ドル
4月9日
- OPECプラス会合実施
- メキシコがまさかの減産合意せず 原油安
- 22.36ドル
4月12日
- メキシコを含め970万バレル減産合意
- しかし、原油需要の低迷と保管場所の問題から続落
- 22.4ドル
4月20日
- Xデー
- 5月限先物の期日到来を前に売り殺到。原油先物価格史上初めてマイナスへ突入
- ー37.6ドル
4月27日
- アラムコ(サウジアラビア国営石油精製企業)が5月1日の減産を前に既に減産に取り組んでいると発表
- しかし、原油ETF最大手のUSO(ユナイテッド・ステイツ・オイル)が6月限の先物も全て売却しロールオーバー。原油価格下落
- 13.01ドル
5月1日 (将来)
- 減産開始日
まとめ
こう見ると、怒濤の三ヶ月間です。
原油という日常生活を送るのに一定量必要なものでも、こういった事態が起こるんだと勉強になりました。
今後の展開としては、これ以上経済停滞が長引くようであれば、本格的に貯蔵スペースが無くなり、常にマイナスで推移するといった事も考えられるかもしれません。
あるいは、減産合意している事から需給バランスがある程度改善され、40ドル付近へ戻るかもしれません。(専門家は7月以降の先物の値動きからこっちで予想している人が多いようです)
いずれにしても今回のことで身に染みて思った事は
素人はコモディティに手を出さない!!です。
ここまでご覧いただいてありがとうございました。
もし何か間違え等あればコメント頂けると有り難いです。
それではまた!!!