コラム

レナウンが民事再生手続開始。決算書から予想出来た?現役銀行員が解説

こんにちは、でぃーんです。

先日衝撃のニュースが飛び込んできました。

レナウンの民事再生手続開始です。

私の知る限りではコロナ禍での1部上場企業の倒産は初めてです。

そこで今回は、レナウンの決算書を読み解き、事前に察知する事が出来たのかという事について解説していきたいと思います。

その前に


以下では財務諸表の数字をまとめています。最低限の知識として、決算書の見方は理解しておく必要があるので、以下の記事をご覧頂いてから読み進めて頂く事をお勧めします。

レナウン公式見解

当社は今回の手続きにあたり、以下のような見解を示しています。

  • 長期に渡る売上高の低迷
  • 関係会社からの売掛金が滞った事による引当金の積み増し
  • コロナの影響で販売の目処がたたない事

コロナの影響以外でもいろいろと苦しくて、コロナでトドメをさされたといった状況ですね。

レナウンは中国の山東如意グループの傘下に入っており、その辺りにも影響があったみたいですね。

以下では当社が4月に発表した決算から、以上のことが予想出来なかったのかという事について見ていきます。

売上高推移

まずは売上の推移を見ましょう。

百万20162017201820192020(予想)
売上51,87349,48948,94045,32242,434
経常利益564186204-2,012-9,370
当期利益172-711839-3,947-8,083

2020年を予想としている理由は、前期より決算月が変更となり、10ヶ月分の決算公表となったため、12ヶ月分で割り返した数字を記載しています。

明らかに下降トレンドですよね。

今期は巨額の赤字を計上していますが、93億円の赤字のうち53億円は親会社である「山東如意科技集団有限公司」の子会社である「恒成国際発展有限公司」に対する2019年12月期中に支払期日の到来する売掛金の回収が滞ったことにより、同期に貸倒引当金繰入によるものです。

要は、関係会社が売掛金を支払ってくれなかった事で、巨額の赤字になっているんですね。 

(支払わなかった額は67億円です)

しかし、今期の赤字額は93億円です。

「関係会社が支払ってくれていたら黒字だった」という事ではありません。

つまり、巨額の赤字の原因の大部分は貸倒引当金繰入によるものですが、そもそも40億円以上の赤字は計上される予定だったのです。

ちなみに親会社は昨年に一部国有化されており、

  • 本当に支払えなかったのか
  • 意図的に支払わなかったのか

は分かりませんが、親会社の支援体制が全くない事は分かりますね。

BS推移

次にB/Sの推移、残高から読み取れる事を見ましょう。

尚今回は、読み取れる事がかなりあるので、見にくいですが大事なポイントのみ、報告形式でBSを見る事とします。

2019年2月2019年12月
現預金9,0835,377
売掛金11,18913,423
棚卸資産6,5017,544
貸倒引当金-70-5,840
流動資産合計30,12123,690
有形固定資産1,364692
無形固定資産52355000
固定資産合計9,5918,653
総資産39,71332,344
短期借入金2,2751,666
流動負債合計10,73710,761
長期借入金794421
退職給付負債5,4545,066
固定負債合計7,0516,247
資本金/剰余金41,72841,728
利益剰余金-19,410-26,153
純資産21,92315,335
総資本39,71332,344

B/Sの昨年対比の特徴として

  • 現預金   ー37億円
  • 売掛金   +23億円
  • 棚卸資産  +10億円
  • 貸倒引当金 +58億円
  • 有形固定資産 ー7億円
  • 短期借入金  ー7億円
  • 長期借入金  ー4億円

という事が挙げられます。

これらから推測されることは

  • 商品が売れず(棚卸増加)
  • 売掛が回収出来ず
  • 業績・財務内容が急速に悪化し
  • 銀行が与信を引き始め(借入減少)
  • 現預金が減り
  • 固定資産を売却

したのではないかと考えられます。

多分大体合っているのではないでしょうか。

実際決算短信にも

2期連続経常赤字の為、銀行との財務制限条項に抵触していると記載されています。

またその他の特徴として

  • 無形固定資産が過大
  • 退職給付債務が過大
  • 繰越利益剰余金がそもそもマイナス

という事も挙げられます。

当社はアパレル業の為、商標権を無形固定資産に計上するのは分かりますが、果たして50億円の価値があるでしょうか?

また、50億円もの退職給付金をどのようにして支払うつもりだったのでしょうか?

さらに、繰越利益剰余金はそもそもマイナスであり、資本金と親会社の出資によって債務超過に陥って無かった事が分かります。

一見自己資本比率は高いですが、当社の実力に見合った自己資本では無かったようですね。

CF状況

最後にCFの状況を見てみましょう。

2019/12月
営業CF-4,567
投資CF1,090
財務CF-1,025

本来ならば、3期分並べて推移を検証しますが、その必要もありません。

1期のみで、ハッキリまずいとわかるCFです。

営業CFは、税前利益から、減価償却費等実際には出て行っていない経費をプラスして、現金の流れを理解する為のものでしたよね。

という事は、今期の赤字額から、巨額の貸倒引当金を控除した数字が営業CFとして表示されています。

当社は貸倒関係なく、45億円を営業活動によって失っている事が分かりますよね。

まとめ

今回のまとめは

PLから

  • 下降トレンド
  • 巨額の赤字
  • 貸倒引当金が無くても40億円程度の赤字

BSから

  • 現預金水準が低下
  • 銀行が引いている
  • 資産を売却してなんとか凌いでいる
  • 総資産対比過大な科目が目立つ
  • 出資が無ければ債務超過

CFから

  • 営業活動で40億円以上失っている

事が分かりました。

また、貸倒先が、関連会社という事から

親会社の支援姿勢が明確で無い事も読み取れました。

以上の事から

  • 業績が悪く
  • 財務内容も悪く
  • 親会社の支援なく
  • 銀行の支援も不明瞭

な事が決算書から分かります。

これらを踏まえて考えると

当社は倒産する可能性が非常に高い事が推測出来ますよね。

銀行の支援と親会社の支援があればまだ延命出来る企業でしょうが、決算書からそれらが読み取れない以上、倒産するのが当然の流れです。

ちなみにですが、そもそも貸し倒れが無かったとしてもヤバかったと思います。

昨年の決算で十分まずい内容ですからね。

でぃーん

やっぱり財務諸表をきちんと読む事は大切ですね。

ここまでご覧頂いて有難うございました。

それではまた!!

外部リンク

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