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【DAL】デルタ航空は倒産?バフェットも売却。危険度を決算から読み解く【銘柄分析】

こんにちは、でぃーんです。

本日は、先日世界三大投資家のバフェットが株式を全量手放した事で話題のデルタ航空について解説します。

現役銀行員が、デルタ航空の決算書から、

倒産する可能性はあるのか

という視点で分析していきたいと思います。

分析の前に

今回の記事では、デルタ航空の決算書を読み解いていきます。

決算書の事が全くわからない方は、最低限の知識として以下2記事を読んでからご覧頂く事をおすすめします。

2020年1Qの決算と前提条件

本記事ではデルタ航空が倒産するかどうかという点で解説していきますが、その前に

  • 2020年3月期の決算
  • デルタ航空の今後の方針
  • 今後の業績を予想するための前提条件

を整備したいと思います。

1 2020年3月期の決算

まずはPLからです。

2019 1Q2020 1Q下落率
売上104728592-18%
売上原価94529002-5%
当期利益946-607

PLは前年同月対比、18%の減収となりました。

一方で売上原価は5%の低下に留まり、航空業界の固定費の高さが顕著に現れた形となりました。

次にBSです。

現金5,967 リース負債5,105 
流動資産10,275 航空負債5,598 
有形固定資産31,644 流動負債19,392 
無形固定資産26,819 リース/借入17,866 
固定負債35,037 
純資産14,309 
総資産68,738 総資本68,738 

2019年12月の決算対比

  • 手元資金が+30億ドル
  • 借入が+60億ドル

となっています。

どうやら3月中にかなり手元流動性を高めたようですね。

でぃーん

航空負債とは、皆さんが持っているマイルの事です。結構な額の負債になってますよね。笑

2 デルタ航空の今後の方針

  • 航空本数を減らし売上90%減見込
  • 経費削減により昨年対比経費50%カット
  • 予定していた30億ドルの投資を延長
  • 2Q(6月末)内に手元資金100億ドル用意

との事です。

3 業績予想の前提整備

上記を踏まえて、デルタ航空の業績が以下のように推移すると条件設定します。

  • 2Qは90%の減収。経費は25%削減に留まる
  • 3Qは50%の減収。経費は15%削減
  • 4Qは30%の減収。経費は8%削減
  • 来期1Qは今期1Qと同じ業績

これは、6月以降に緊急事態宣言が解かれ、徐々に人々の航空機利用が戻ると仮定しています。

全く誰もこのまま利用しないとしたら、検証するまでも無く経営破綻ですからね。

また、経費についてはデルタは50%カットするとしていますが、それが出来るなら、今期ももう少し尽力出来たはずです。

なので、それぞれの期の売上減少に比例して経費削減するというシナリオに留めてあります。

CFの推移は

  • 今期予定していた30億ドルの投資を延長
  • 2Q終わりに現在対比40億ドルの現金の積増し

を条件とします。

PLの推移

PLは前提条件に当てはめると以下のような推移となります。

2020 1Q2020 2Q2020 3Q2020 4Q2021 1Q
売上8,5921,2546,2808,0078,592
売上原価9,0027,5698,9159,2379,002
当期利益-607-6,415-2,735-1,330-607

当然ですが1年間赤字を垂れ流し続けることとなります。

ただ、航空業界は3Q、4Qに利用者が多く、業績に下方修正をかけても、それなりの売上となりました。

またデルタ航空は現状、日に5000万ドルの赤字としており、1Qあたり90日と考えると、45億ドルの赤字となります。

私の業績予想では64億ドルの赤字としていますが、それは上記の前提条件の通り、経費の削減がそこまでうまくいかないと仮定しているからです。

CFの推移

CFの推移は前提条件と当てはめると以下のような推移となります。

2020 1Q2020 2Q2020 3Q2020 4Q2021 1Q
営業CF358 -4,585 -1,985 -1,460 358 
投資CF-2,971 -1,000 
財務CF5,344 9,000 
現預金収支2,731 4,415 -1,985 -1,460 -642 
現預金末残5,967 10,382 8,397 6,937 6,295 

前提条件の通り

  • 2Q末で手元資金100億ドル補完するために、2Qで90億ドルの借入
  • デルタ航空の例年の投資CFは−1000であり、30億ドルの投資延長とすると、4Qまで投資は0になる

となっています。

デルタ航空の発表の通り2Qで100億ドルの現金の補完に成功するとなると、現金はかなり余裕がある事がわかります。

BS推移

最後に上記PLとCFの動きを加えた、2021年1Q時点でのBSの内容は以下の通りです。

現金6,295 リース負債5,105 
流動資産10,603 航空負債5,598 
有形固定資産31,229 流動負債19,392 
無形固定資産26,819 リース/借入26,866 
固定負債46,037 
純資産3,222 
総資産68,651 総資本68,651 

1年間の赤字と多額の借入によって自己資本比率は20%から4%に低下しています。

業績推移へのコメント

上記業績推移の通り

  • 1年間赤字が続き純資産が毀損
  • 借入によって現金は潤沢
  • BSはボロボロ

になる事が分かりました。

もし今期のような水準の業績(売上18%減)が続けば

  • 2022年2Qに債務超過
  • 2023年3Qにデフォルト

となります。

(2021年1Q純資産3000➗当期赤字600=5Q後に債務超過/2021年1Q現金6000➗CFマイナス600=10Q後にデフォルト)

もちろん新たな銀行融資を継続して受けられれば倒産はしませんが、債務超過は免れない状況です。

また上記計算は、借入の返済を考慮していません。銀行から返済を迫られるともっと早くデフォルトとなるでしょう。

そしてバフェットが航空株を手放した理由は

コロナが収まっても、人々の動きはすぐに戻らない

という考えからです。

バフェットは2年間以上は売上減が続くと見ているのでしょう。

それであれば、長期投資スタンスのバフェットでさえも航空株を手放した理由が見えてきますよね。

まとめ

これまでの話をまとめると

  • 売上はかなり減少する
  • 財務状況も良くない
  • 現金は2年半は持つ
  • その間に航空業界が元に戻る可能性は未知数

だという事を述べてきました。

今回の財務状態が、仮にコロナの影響を受けていなくてこの状況だとすると銀行員としてはデフォルトする企業だという見方をします。

今回打撃を受けているのがデルタだけで無く航空業界全体のなので、米政府の救済案が今後続出する可能性はもちろんありますが、政府に頼った投資判断はすべきではありません。

テクニカル分析をすると株価は上がる確率が短期的には高いとする説もありますが、長期的に見ると投資するべきでないと言えるでしょう。

逆張り的に張るのも悪くありませんが、現状もっと魅力的な投資先はたくさんあると思います。

でぃーん

私は最近アップルを買い増しました。

一生ついて行きます!!

ここまでご覧頂いてありがとうございました。

それではまた!!

外部リンク

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